動詞の活用・その4

大きなテーマは
日本語文法と国文法の違いです。

前回は
その違いの中での
品詞の分類について見てきました。
「品詞の分類」について
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品詞分類・その3

 

ここでは
「動詞の活用」を中心に考えます。
その前に、まずは
国文法と日本語文法の
名称の違いを見てみます。

日本語文法には
統一された名称がありませんから、
一般的に使われているものを
記載します。

【主な名称の違い】

国文法 日本語文法
自立語と
付属語
使いません
動 詞 動 詞
形容詞 イ形容詞
形容動詞 ナ形容詞
名 詞 名 詞
副 詞 副 詞
連体詞 使いません
接続詞 接続詞
助 詞 助 詞
10 係助詞/
副助詞
取り立て助詞
11 感動詞 (ほとんど)使いません
12 助動詞 使いません
テンス・ムードなど
それぞれの形式として扱います。
13 五段活用
動詞
Ⅰグループ動詞/Ⅰ類動詞/子音動詞
強変化動詞
14 下一段活用
動詞
Ⅱグループ動詞/Ⅱ類動詞/母音動詞
弱変化動詞/
15 上一段活用
動詞
16 カ行変格
活用動詞
Ⅲグループ動詞/Ⅲ類動詞
不規則動詞
17 サ行変格
活用動詞

この表を見てもわかる通り、
日本語文法と国文法で
大きく違うのは
動詞の名称です。

活用形の名称も
かなり異なりますから
表にしておきます。

【活用形の名称】

国文法 日本語文法
未然形 否定形
意向形
受身形
使役形
連用形 連用形
テ 形
タ 形
丁寧形
終止形 辞書形
連体形
仮定形 バ 形
命令形 命令形
 - マス形
 - タリ形
 - タラ形
 - 可能形

この表を見て気が付くのは
日本語文法の
活用形の名称の多さです。

国文法は
「未然形」「連用形」終止形」
「連体形」「仮定形」「命令形」
の6種ですが、

日本語文法は
それに比べ倍以上です。

これは
日本語文法が
「助動詞」という考え方を
用いていないからです。

日本語文法は
日本語を話すための文法です。

そこで
「助動詞」を使って
細かく分類するのではなく、
ひとまとまりの「表現」として
扱っています。

「書く」という動詞を使って
日本語文法と国文法の違いを
具体的に見てみましょう。

動詞
「書く」
日本語
文法
国文法
書かない 否定形 未然形+助動詞ナイ
書こう 意向形 未然形+助動詞ウ/ヨウ
書かれる 受身形 未然形+助動詞レル/ラレル
書かせる 使役形 未然形+助動詞セル/サセル
書きます マス形 連用形+助動詞マス
書いて テ形 連用形+接続助詞テ
書いた タ形 連用形+助動詞タ
書いたり タリ形 連用形+助動詞タリ
及び、その活用形
書いたら タラ形
書く 辞書形 終止形・連体形
書けば バ形 仮定形+接続助詞バ
書ける 可能形 五段動詞:可能動詞
一段動詞:未然形+助動詞ラレル
書け 命令形 命令形

ここまでは
名称の違いに
フォーカスを当てました。
次は
動詞の活用について
見ていきます。

まずは
国文法の動詞についてです。

国文法、動詞の活用の種類

動詞は あまたありますが、
そのすべてが
同じように活用するわけではありません。
学校で習った動詞の活用を
思い出してみましょう。

全部で5種類ありました。
表にまとめてみます。

動詞活用の種類    解  説
五段活用 五十音図のア、イ、ウ、エ、オの
五段(*)にわたり、活用する
「書く」「読む」など
上一段
活用
五十音図のイ段だけで活用する
「着る」「見る」など
下一段
活用
五十音図のエ段だけで活用する
「やせる」「受ける」など
カ行変格
活用
「来る」だけの
特殊な活用
サ行変格
活用
「する」「~する」だけの
特殊な活用

五段(*)

 

 

 

では
一つずつ説明していきます。
まずは五段活用をする動詞から。

五段活用動詞(=五段動詞)

活用形には
「未然形」「連用形」「終止形」
「連体形」「仮定形」「命令形」

この6つの種類があります。

五段動詞の「書く」を活用させてみます。

書か(ナイ)・・未然形
書こう(ウ)・・未然形
書き(マス)・・連用形
書い(タ) ・・連用形
書く(。) ・・終止形
書く(トキ)・・連体形
書け(バ) ・・仮定形
書け(。) ・・命令形

これを見ると

書か(ka)ない ・・ア段
書こ(ko)う  ・・オ段
書き(ki)ます ・・イ段
書く(ku)。       ・・ウ段
書け(ke)ば  ・・エ段

「書く」という動詞は
五十音図の
「ア・イ・ウ・エ・オ」の
各段の言葉で活用しています。

そこで、
「書く」と同じパターンで
活用する動詞を
「五段活用動詞(=五段動詞)」
と言います。

●日本語文法の名称では
「Ⅰグループ動詞」です。
活用の変化が大きいので、
「強変化動詞」とも言います。

上一段活用動詞

「いる」「見る」「着る」「煮る」「似る」
「起きる」「すぎる」「閉じる」「落ちる」
「延びる」「借りる」・・・

上一段動詞の「見る」を
活用させてみます。

見(mi)ナイ
見(mi)マス
見(mi)ル
見(mi)レバ
見(mi)ロ

「見る」という動詞は
五十音図の
「ア・・ウ・エ・オ」の
イ段だけで活用しています。

また、
どうして「上一段」活用と
呼ばれるのかというと、
五十音図
「ア段、イ段、ウ段、エ段、オ段」の
中心である「ウ段」。
その一つ上の段である「イ段」
活用するからです。

下一段活用動詞

「出る」「得る」「減る」「寝る」
「食べる」「受ける」「入れる」・・・

下一段動詞の「寝る」を
活用させてみます。

寝(ne)ナイ
寝(ne)マス
寝(ne)ル
寝(ne)レバ
寝(ne)ロ

「寝る」という動詞は
五十音図の
「ア・イ・ウ・オ」の
エ段だけで活用しています。

また、
どうして「下一段」活用と
呼ばれるのかというと、
五十音図の
「ア段、イ段、ウ段、エ段、オ段」
の「ウ段」の一つ下の段
つまり、「エ段」
活用するからです。

●日本語文法では
「上一段動詞」と「下一段動詞」を
わけません。
活用のパターンが同じだからです。
両者を
「Ⅱグループ動詞」と呼びます。

また、活用の変化が
Ⅰグループ動詞に比べ小さいので、
「弱変化動詞」とも言います。

カ行変格活用動

「来る」と「する」は
特殊な活用をする動詞です。
五段・上一段・下一段動詞の
いずれの活用にも当てはまりません。

こうした特殊な活用の仕方を
「変格活用」と言います。
カ行変格活用とサ行変格活用の二つです。
以下はカ行変格活用です。

こ(ナイ) ・・未然形
き(マス) ・・連用形
くる(。) ・・終止形
くる(トキ)・・連体形
くれ(バ) ・・仮定形
こい(。) ・・命令形

サ行変格活用動詞

し(ナイ) ・・未然形
し(マス) ・・連用形
する(。) ・・終止形
する(トキ)・・連体形
すれ(バ) ・・仮定形
しろ(。) ・・命令形

「する」は
様々な語と結びついて
複合動詞を作ります。

複合動詞の活用は
「する」と同じ
サ行変格活用になります。

「する」の複合動詞の例

①旅する、くよくよする(和語との複合)
②勉強する、練習する(漢語との複合)
③ドライブする、バックする(外来語との複合)
④重んずる、軽んずる(形容詞との複合)

●日本語文法では
「カ行変格活用動詞」と
「サ行変格活用動詞」を
「Ⅲグループ動詞」と呼びます。
また、「不規則動詞」とも言います。

ここで、
意外と紛らわしいので、
「活用形」と「活用の種類」について
まとめておきます。

「活用形」「活用の種類」の違い

「活用形」と「活用の種類」は
似ています。

しかし、指しているものは違います。

「活用形」
単語が活用するときの
一つひとつの形のことです。

つまり
「未然形」「連用形」「終止形」
「連体形」「仮定形」「命令形」
この6種類のことです。

「活用の種類」
単語の活用の仕方を
タイプ別に分類したもので、

動詞の場合、
「五段活用」
「上一段活用」「下一段活用」
「カ行変格活用」「サ行変格活用」
この五種類のことです。

●日本語文法の呼び方では
「Ⅰグループ動詞」
「Ⅱグループ動詞」
「Ⅲグループ動詞」

日本語教育で大切なのは
ある「動詞」を見た時、
この動詞の「活用の種類」
(どのグループの動詞であるのか)
を識別できることです。

「来る」は
「カ行変格活用」で

「する」は
「サ行変格活用」です。

この二つは
迷うことはありません。

それ以外の動詞は
どうやって
「活用の種類」
見分けたらいいのでしょうか。

動詞の活用の種類の見分け方

「~る」の形で終わらない動詞

(1)まず、動詞の「終止形・辞書形」の
最後の形が「る」であるかどうかを見ます。

「書く」「食べ」「見」「寝
「帰」「取」「読む」「待つ」
「話す」「買う」「聞く」「起き

上の動詞の中では
「書く」「読む」「待つ」「話す」
「買う」「聞く」
の動詞は「~」の形で終わっていません。

これらは全て「五段動詞」となります。

●「~る」で終わらない動詞は
「五段活用動詞」
(=Ⅰグループ動詞)

次は
「~る」で終わる動詞が
「五段動詞」なのか
「上一段動詞」なのか
「下一段動詞」なのか
について見ていきます。

「~る」の形で終わる動詞

「食べ」「見」「寝
「帰」「取」「起き

まず、
「~る」で終わる動詞を
過去形(タ形)にします。

「帰る」と「取る」は
過去形にしたとき
促音便が現れます。

「帰る」→「帰た」
「取る」→「取た」

「上一段動詞」と
「下一段動詞」は
音便形を持たないので、
これらは
「五段活用動詞」だとわかります。

●「過去形(タ形)」
⦅連用形(テ形)⦆にしたとき、

音便変化をするのは「五段活用動詞」
(=Ⅰグループ動詞)

 

「食べ」「見」「寝
「帰」「取「起き

次に
「食べ」「見」「寝」「起き
について見ていきます。

この動詞も過去形(タ形)にします。

「食べる」→「食べ
「見 る」→「見 
「寝 る」→「寝 
「起きる」→「起き

過去形(タ形)にしたとき、
これらの動詞は
音便変化をしません。

そのままの形で
過去形の「た」が付きます。

そこで、
五段活用動詞ではないとわかります。

また、「」の前の音がイ段
「み(mi)た」→「イ(i)」
「おき(ki)た」 →「イ(i)」

の動詞は「上一段動詞」

」の前の音がエ段
「たべ(be)た」→「エ(e)」
「ね(ne)た」 →「エ(e)」

の動詞は「下一段動詞」
となります。

●「上一段動詞」「下一段動詞」
を合わせて、日本語文法では
「Ⅱグループ動詞」と呼びます。

「動詞の活用の種類」を見わけるには
①「~る」で終わるのかどうか、
②そして、過去形にしたときに
音便が現れるのかどうか、
これがポイントとなります。

※「~る」で終わっているが、
Ⅱグループの動詞ではない、
Ⅰグループの動詞である。
そうした動詞の数は
初級段階では
あまり多くありません。
以下に例を示しておきます。

「切る、走る、知る、
帰る、入る、減る、要る」

 

国文法と日本語文法・その1
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ではではニゴでした。

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