「テンス」その4

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「テンス」その3

この記事は「テンス」その4です。
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前回(「テンス」その3)では
「タ形」の2つの意味について考えました。

タ形の2つの意味

タ形
「過去」を表すだけではありません。

「現在完了」も表せます。

(1)「過去」としてのタ形

「過去」としてのタ形
純粋なテンスです。

(2)「現在完了」としてのタ形

「現在完了」としてのタ形
アスペクトの視点をもったテンスです。

「過去」としてのタ形
過去のことは過去のことで
現在とのつながりはありません。

「現在完了」タ形
過去に起きた出来事と
現在起こっている出来事とが
つながっていることを示しています。

説明だけではわかりにくいので、
例文を示します。

(例1)先週、ユニクロで新しいコートを買った

(例2)この鞄は昨日からここにあった

(例3)トムさん、少しやせた

●(例1)の

「先週コートを買った」ことは
過去のことで、今現在とは関係ありません。

ところが
(例2)(例3)は
過去に起こったことが、
現在までつながっています。

●(例2)この鞄は昨日からここにあった

鞄は昨日(=過去)から今現在まで
ここにあり、過去と現在がつながっています。

●(例3)トムさん、少しやせた

トムさんが
いつ痩せたのかは、わかりません。が、
過去に「痩せる」という変化が起きて、
今現在「痩せている」という状態にあります。
つまり、
過去と現在とがつながっています。

以上のように、
ゆっくり考えを深めれば
この文は単なる「過去」を表しているのか、
それとも
「現在完了」を表しているのかは
理解できます。

しかしながら、
直感的に、こちらは「過去」で、
こちらは「現在完了」だ、と
すぐに峻別するのは難しい項目です。

それはどうしてなのでしょうか。

見分けるのが難しい「過去」と「現在完了」の表現

例文を見ながら
直感的わかりにくさを説明していきます。

(例1)きのう本を読んだ。

(例1)は
別に今現在とはつながっていません。
単に「過去」(=きのう)に
本を読んだと、述べているだけです。

(例2)ねえねえ、もう、この小説読んだ?

(例2)は
この小説についての話をしたいと思い、
今現在の時点で、
この小説を読み終わっているか、どうかを
尋ねています。

(例1)は
「きのう、小説を読んだ」と
過去(きのう)の出来事を
淡々と述べているのに対し、

(例2)は
過去のいつの時点で小説を読んだのかは
問題にしていません。
「もう、読み終えたのか」と、
今現在読むという行為を終えてしまっていて、
この小説について、
現在話せる状態であるのかどうかを
問うています。
(例2)は
過去と現在とがつながっています
そして、
現在の時点で、
読み終わっているのか否かを
問題にしているのです。

つまり
現在完了」となります。

もう一つ例を挙げます。

(例1)【友達との待ち合わせ】
A:①田中さん、来た?
B:②(田中さんが来つつあることに気が付いて)
(ほら)田中さん、今、ちょうど来たよ。

Aさんの①の文は「現在完了」です。
①は現時点での、
田中さんの到着の有無を聞いています。

(例2)
A:①きのうの会議に田中さんは来た?
B:②うん、来た。

(例2)のAさんの①の文は
単にきのう田中さんが会議に
来たかどうかを尋ねています。
これは「過去」の用法で
今現在とは何のつながりもありません。

このように、
ゆっくりと文の意味を咀嚼していけば
例文が「過去」を表しているのか
現在完了」を表しているのかは
わかります。

しかし、
どうして直感的に、すぐに
わからないのでしょうか?

どうして「過去」と「現在完了」の表現は
見分け方が難しいのか?

それは
日本人の意識の中で
過去」と「現在完了」とを
明確に分けていないからです。

「普段から意識して、分けて使う」
ということがないので、
どちらが「過去」で、
どちらが「現在完了」なのか、
瞬時には識別できないのです。

では
日本人があまり意識していないものを
外国の学習者に
どう教えたらいいのでしょうか。

その解決法として
「過去」「現在完了」を教える時には、
以下のことに注意します。

教える時には「副詞」を必ず用いる

私たち日本人は
過去」のことを述べる時には
「きのう」「先週」「一か月前」・・・
のように、「過去」を示す副詞
よく一緒に使います。

そして
「現在完了」を述べる時には
「もう」「すでに」「今」「やっと」・・・
など、
今現在と過去とがつながっていることを示す
副詞を使っています。

ですから、
学習者に
「過去」「現在完了」の違いを
教えるときには、
必ず、
代表的な「副詞」を用いた例文をあげましょう。

「副詞」から判断した方が
やさしく感じられます。

例えば
「過去」

(1)一か月前に台風20号が来た。

解説:「一か月前」があるために、
「過去」のことだとすぐにわかります。

 

(2)去年、北海道を旅行した。

解説:「去年」があるために、
「過去」のことだとすぐにわかります。

 

「現在完了」

(1)宿題、やっと終わった!

解説:「やっと」があるので、
終了した」つまり
現在完了」だとわかります。

 

(2)パスポート用の写真はすでに撮った。

解説:「すでに」があるので
パスポート用の写真は
現在までに撮り終えている」つまり
現在完了」だとわかります。

次に、テンスではない
特別な用法のタ形を挙げておきます。

特別な「タ形」

次に見ていくタ形
テンスでも、アスペクトでもありません。
特別なタ形です。

「タ形」の様々な用法

(1)発見/想起
(2)反事実
(3)差し迫った要求

(1)発見/想起

(1)あっ、ここにあった
(鍵を探していて、発見した時)

(2)田中さんはw大学だったんですね。
(知らなかった事実に気づいたとき)

(3)いけない、今日はオンラインミーティングだった
(予定を思い出したとき)

(2)反事実

(1)リーマンショックを予想できていれば、
こんなに株を買わなかった
(実際には株を買ってしまっている。
つまり、反事実を述べている)

(2)もっと頑張っていれば、合格できたのに。
(実際には不合格だった。
つまり、反事実を述べている)

(5)差し迫った要求

(1)安いよ。さあ、買った買った
(「買ってくれ」という要求を述べている)

(2)じゃまだよ。どいたどいた
(「どいてくれ」という要求を述べている)

※差し迫った要求を示す表現は
「買った、買った」のように、
同じ動詞を繰り返すことが多いと言えます。

ただし、
「待つ」だけは
一回で命令を表すことができます。

(例)ちょっと、待った

 

ではではニゴでした。

 

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