「テンス」その2

まずは前回の復習から。

日本語の述語は3種あります。
動詞、形容詞、名詞です。

そして
この述語は意味を考えた時、
大きく二つに分けられます。

一つは
「動き」がある述語、

もう一つは
動きのない「静的」な状態を表す
述語です。

動的述語と静的述語

ここで
動きのある述語を「動的述語」、
動きのない、状態を表す述語を
「静的述語」と呼びます。

名詞、形容詞は
「静的述語」のほうに分類されます。

動詞は
「動作」や「変化」を表すものは
「動的述語」となり、

「ある」や「いる」のように、
状態を表すものは
「静的述語」に分類されます。

 

 

 

●状態を表す静的述語の
「ル形」は「現在」を表し、

●動作や変化を表す動的述語の
「ル形」は「未来」を表します。

このように
同じ「ル形」でも、
動的述語か静的述語かでテンスが
変わってきます。

上記で
<動作や変化を表す動的述語の
「ル形」は「未来」を表す>
と述べましたが、

●動的述語に分類されている
「動作動詞」や「変化動詞」の
「ル形」が「未来」ではなく、

「過去・現在・未来」
といった時間の枠を超えた意味を
表すことがあります。

恒常的表現

以下の例文を見てください。

(例1)これから休憩室でコーヒーを飲む

(例1)は動作動詞「飲む」を使っている文で、
飲む」は「未来」を表しています。

(例2)フランス人はたいてい食後に
コーヒーを飲む。

(例2)は
(例1)と同じ動作動詞「飲む」を
使っていますが、
この「飲む」は
「未来」を表しているでしょうか?

(例2)の「ル形」の「飲む」には
「未来」の意味はありません。
フランス人の「習慣」あるいは
「一般的事実」を表している、
と言えます。

「習慣」や「一般的事実」とは
よく起こることです。
つまり、
恒常的であるとも言えます。

「フランス人はたいてい食後に
コーヒーを飲む」

この文は
恒常的な意味を表しており、
動作動詞の「ル形」を使ってはいても、
「未来」の意味はありません。

つまり、
恒常的表現は
「過去・現在・未来」といった
時間の枠組みから外れているのです。

(例)フランス人は毎朝たいてい
フランスパンを食べる

この例文も
フランス人の習慣を表しています。

こうした恒常的表現は
五つの意味に分けられます

動詞「ル形」の恒常的表現5種

1.一般的事実を表す

静岡の人はよく緑茶を飲む

2.習慣、繰り返し

(私は)毎朝、30分ほど走る

3.真理

太陽は東から昇り、西に沈む

4.規則

この場所での飲食は禁止する

5.ことわざ

石橋をたたいて渡る

上記の5分類した例文は
動詞の「ル形」が「未来」ではなく、
恒常的な意味を表しているものです。

「未来」を表す文と比べると
その違いがはっきりとします。
(1)恒常的表現5種
(1’)個別的な未来
という形で比べていきます

(1)一般的事実

●コーヒー通は
たいてい豆を挽くことから始め、
丁寧にコーヒーを淹れる

(1’)個別的な「未来」

●今からコーヒーを淹れるけど、
一緒に飲む?

(2)習慣、繰り返し

●毎朝1キロ走る

(2’)個別的な「未来」

●今からこのトラックを2周走る

(3)真理

●水は高いところから低いところへ向かって流れる

(3’)個別的な「未来

●見て見て。もうすぐ扉があいて水が流れるよ。

(4)規則

●オートバイ乗車時はヘルメットをかぶる

(4’)個別的「未来

●こんな暑い日に毛糸で編んだ帽子をかぶるの!?

(5)ことわざ

●エビで鯛を釣る

(5’)個別的「未来

●さあ、今からマスをたくさん釣るぞ。

ここでちょっと、まとめておきましょう。

まとめ

●「タ形」は
静的述語か、動的述語かといった
述語の種類にかかわらず、
過去」を表す。

●「ル形」は
述語の種類によって、
未来」を表すのか、
現在」を表すのかが、決まる。

●「ル形」は
テンスの意味を超えた、
恒常的意味を示す表現がある。

以下に
ル形テンス」をまとめた表を示します。

 

 

 

以下は
上記の表の※印部分の
補足説明です。

●動的述語の「ル形」は「未来」を表します。

例)この本は明日読む

※「現在」の意味を表すときには
テイル形」にします。

例)お兄ちゃんは今、本を読んでいるから、
静かにしてね。

●「ある」や「いる」のような
状態を表す静的述語の「ル形」は
「現在」を表します。

例)あそこに山田さんがいます。(現在

※時に、「未来」を表すこともできます。

例)今このゲージはからですが、来週には
2匹のワンちゃんがいます。(未来

絶対テンス

(※複文を除きます)

単文の「テンス」は
発話時を基準とします。

 

 

そして
その会話中の出来事の内容を
発話時の事なのか(現在)、
発話時より前の事なのか(過去)、
発話時より後の事なのか(未来)、

といった「現在」「過去」「未来」に
分けることができます。

これがテンス、
つまり「時の表現」です。

まとめると、

●単文のテンスは
通常は発話時を基準とし、
発話時より前に起こったことには
「タ形」を使い、
意味としては「過去」を表します。

●発話時と同時の場合には
「ル形」を使い、
意味としては「現在」を表します。

●発話時より後に起こったことにも
「ル形」を使いますが、
意味としては「未来」を表します。

単文では
このように
発話時を基準として
「ル形」にするのか
「タ形」にするのかを決めます。
これを「絶対テンス」と言います。

●単文や複文の主節は
「絶対テンス」です。

 

 

 

 

※ただし、恒常的意味を表す表現は
時間の枠を超えているため、
「絶対テンス」とはなりません。

※また、複文の従属節は「相対テンス」になり、
「絶対テンス」とはなりません。

絶対テンスと相対テンスの基準点

単文や複文の主節のテンスは「絶対テンス」です。
「絶対テンス」の基準点は発話時です。

<単文>
→あす図書館に行く

これは単文ですから、
絶対テンス」です。
基準点は発話時で、
明日(未来)のことを述べているので、
ル形行く)となります。

<複文>

寝る前に、 歯を磨く
(従属節)  (主節)

複文の従属節は「相対テンス」です
複文の主節は「絶対テンス」です。

「相対テンス」というのは
基準点が発話時ではありません。

基準点
主節の動作が行われた時点となります。

この複文の例で言うと
主節歯を磨く」という時点が
基準点となります。

例文
寝る前に歯を磨く

のように、一つの文の中に
二つの出来事がある場合、
となる方を「主節
となる方を「従属節」と言います。

日本語の複文の場合、
主節は原則的に最後の文です。

そして、
従属節テンス
主節の動作が行われた時点を基準として、
「ル形」を使うのか
「タ形」を使うのかが決められます。

相対テンスとは

フランスに行くとき成田空港でおみやげの風呂敷を買った
(従属節)      (主節)

 

複文の従属節は「相対テンス」ですから、
基準点は主節の動作が行われた時点です。
そこで、
「風呂敷を買った」ときが基準点になります。

発話時が基準点だとわかりやすいのですが、
そうではないので、
成田空港のお土産物屋さんで、
「風呂敷を買っている」自分を想像してみてください。

フランスへ行くのは
風呂敷を買うですか。
それとも
風呂敷を買ったあとですか。

もちろん、
成田空港で風呂敷を買ったあとで、
フランスに行きます。

時間の流れを考えると

風呂敷を買った→それから、フランスに行く

となります。

相対テンス」の時には
「風呂敷を買う」と「フランスに行く」の
どちらが先で、どちらが後かを考えます。

主節の「風呂敷を買う」が基準点なので
「フランスに行く」のは
風呂敷を買ったあとになります。
つまり未来です。

そこで、
フランスへ「行く」とき、は
ル形」を使います。

 

では次の例文はどうでしょうか。

フランスに行ったとき友達に風呂敷をあげた
(従属節)       (主節)

基準点は主節の動作が行われた時点です。
つまり、友達に「あげた」ときです。

では
「あげた」を基準点としたとき、
「フランスへ行った」は
その時より未来の事なのか、
それとも過去の事なのでしょうか。

時間の流れは
「フランスに行った」→それから、「友達にあげた
となります。

基準点の「友達にあげた」から見ると
「フランスに行った」のは
「友達にあげた」より
の事=過去のことになります。

そこで、
タ形」の「行った」を用います。

長くなりましたので、
いったんここで終わりにします。
次回はこのつづきから。

まとめておくと
●単文や主節のテンスは「絶対テンス」

●複文の従属節のテンスは「相対テンス」
従属節のテンスは
「過去」「未来」とは関係なく、
主節との関係で、テンスがきまります。
そこで「相対テンス」と言います。

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→「テンス」その5

 

 

ではではニゴでした。

 

 

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