授受動詞を使った敬語表現(2)いただく

ここでは
授受動詞の敬語
「いただく」
について見ていきます。

「くださる」をご覧になりたい方は
以下をご覧ください。
↓↓↓
授受動詞を使った敬語表現「くださる」


敬語表現は
大きく5つに分けられます。

(1)尊敬語
(2)謙譲語Ⅰ
(3)丁重語(=謙譲語Ⅱ)
(4)丁寧語
(5)美化語

この中で授受表現と結びついているのが、
(1)尊敬語  と
(2)謙譲語Ⅰ です。

「くださる」
は尊敬語の表現に、

「いただく」
は謙譲語Ⅰの表現に使います。

では
(2)謙譲語Ⅰ
の復習から始めましょう。

(2)謙譲語Ⅰ

謙譲語Ⅰの場合、
自分自身が敬意を表している人に
何かをしてあげたい、と思うことが
ポイントとなります。

例えば、
日ごろ尊敬するA先生が
目の前で
重そうな荷物をもっています。

自分がA先生の荷物を持ってあげたい!
それ(荷物を持つ)と同時に、
A先生に自分が敬意を持っている
ということも伝えたい。

こういう時が
謙譲語Ⅰの出番です。


自分自身の先生の荷物を「持つ
という行為を
謙譲語化します。

<例>

自分:あっ、A先生、こんにちは。
   荷物、重そうですね。
   持ちます
    ↓
  「持つ」の謙譲語化
    ↓  
   お持ちします。

これで、
A先生に敬意を表した文となります。

 

次に、
授受動詞を使った
敬語表現を見ていきましょう。

授受動詞を使った敬語表現(謙譲語Ⅰ)

まず、授受動詞の敬語(謙譲語Ⅰ)
「いただきます」について考えます。

「いただく」の四つ意味

(例)(私は)A先生にお土産をいただきました

「いただく」は
以下の四つの意味を持ちます。

(1)「もらう」という意味。
(2)「誰に(もらうのか)」の
   「(A先生)に敬意を表しているという意味。
(3)その「もらう」という自分の行為を
   恭しくする(=敬語形式にする)。
(4)「(A先生)」から「もらう」ので、
   私がその「(A先生)に」から
   恩恵を受ける、という意味。


では、
謙譲語Ⅰいただくを使った
敬語表現には
どんな形式があるのかを見ていきます。

授受動詞を使った謙譲語Ⅰの形式

謙譲語Ⅰ「いただく」を使った
敬語形式は
以下の三つがあります。 

(1)動詞て形 + いただく
(2) + 和語動詞連用形 + いただく
(3) + 漢語動作名詞  + いただく


(1)動詞て形+いただく、の例:

●先生に推薦状を書いていただきました

 

(2)+和語動詞連用形+いただく、の例:

●先生に小説を書きいただきました

 

(3)+漢語動作名詞+いただく、の例:

●先生に小説を執筆いただきました


(1)(2)(3)の意味は
ほぼ同じですが、
(2)(3)の形式を使った方が
敬意を表す度合いが高くなります。

また、
(2)と(3)の違いは
和語動詞と漢語動作名詞の差となります。
(3)の漢語動作名詞を使った方が
硬い感じを表すことができます。

 

いただく」の意味と形については
以上の通りです。
では
前回学んだ「くださる」と
この「いただく」は
どう違うのでしょうか。

 

「くださる」VS「いただく」

「くださる」「いただく」は
ともに敬語ですが、
その意味、使い方の違いは
もとの授受動詞の持つ
言葉の意味、使い方に依拠しています。

そのため、
敬語としての性質や働き方が
異なります。

【くださる】(尊敬語)

(例1)A先生(私)プレゼントをくださった

(例1)は
先生に敬意を示すとともに、
その先生が(私に)恩恵を与えています。


【いただく】(謙譲語Ⅰ)

(例2)(私)A先生プレゼントをいただいた

(例2)は
先生に敬意を示すとともに
その先生から(私が)恩恵を受けている、
ということを意味しています。

(例1)と(例2)とでは
先生の「格関係」が変わっています。

 

つまり、
先生 くださる。
先生 いただく。

のように、
使う助詞が変わります。

また、(例1)(例2)は
形がとてもよく似ています。
助詞の「」と「」 
が違うだけです。

(例1)先生ご指導くださいました
(例2)先生ご指導いただきました



そのうえ、「いただく」系は
「私が」をほとんど言いません。
●(私が)先生ご指導いただきました

そこで、
授受動詞を使った敬語表現は
学生にとっては難しく、
間違えやすいのです。

学生の間違えた例1

✖(例1)(この推薦状は)
    先生お忙しいところ、
    お書きいただきました

〇先生 → お書きくださいました


✖(例2)(この推薦状は)
    先生無理を言って
    お書きくださいました

〇先生 → お書きいただきました


それから、もう一つ。
以下のような質問を
学生から受けることがあるので、
ここに記しておきます。

【学生からの質問】

「くださる」と「いただく」
格関係が変わることは、わかりました。
ではどちらの表現が
より丁寧なんですか?

「くださる」と「いただく」は
どちらが丁寧なのか?

授受動詞を使った尊敬語表現の
くださる」系と
授受動詞を使った謙譲語Ⅰ表現の
いただく」系とでは
どちらの表現が
より丁寧なのでしょうか?

(1)田中さんがご説明くださる

(2)田中さんに説明いただく

(1)も(2)も
「説明する」のは田中さんです。
そして両者とも
田中さんに敬意を表している、
という点では変わりありません。

時に
「田中さんがご説明くださる」
の方が、
「田中さんが」する動作を
直接高めているので、
より丁寧な感じを受ける、
という人もいます。

しかし、文法的には
どちらも「田中さん」に
敬意を示す表現で、
丁寧さの優劣をつけることは
難しいと言えます。

文法的に考えると
丁寧さに優劣はつけられませんが、
感じ方は
個人個人によって異なる、
ということでしょうか。

では、
「丁寧さが同じである」
にもかかわらず、
「二つの表現を持つ」のは
どういうことなのでしょう。

焦点の当て方の違い

違う表現を持つ、
ということは、
必ずそれぞれに、
異なるポイントがあります。

丁寧さに関しては同じでも、
焦点の当て方は異なります。
(1)(2)それぞれの
フォーカスポイントを
見ていきましょう。


(1)田中さんがご説明くださる

(1)は田中さんの
「説明する」という行為そのものに
フォーカスしています。


(2)田中さんに説明いただく

(2)は自分が恩恵を受けている
ということにフォーカスしています。

つまり、
田中さんの行為に
焦点を当てたいときには
(1)の「くださる」系を使い、

自分の受ける恩恵
焦点を当てたいときには
(2)の「いただく」系を使う

ということになります。

では
相手にお願いするときに使う
●~くださいますか?

●~いただけますか?

は、どんな違いがあるのでしょうか。

(1)先生、ご説明くださいますか?

(2)先生、ご説明いただけますか?

上記の(1)と(2)の例文で言うと
丁寧さに違いが出てきます。

例文(1)の
「ご説明くださいますか?」は
「説明する」という動作に
焦点があります。

例文(2)の
「ご説明いただけますか?」は
自分が先生にお願いして説明してもらう、
という意味を表せます。

そこで、文法的には
「~いただけますか?」
の方が、より丁寧な表現となります。

 

ではではニゴでした。

 

 

 

 

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