「て形」の意味・用法/否定「~ないで・~なくて」(その6)
前回に引き続き、
「て形」の否定文について考えます。
まずは、
「て形」の否定文を見ていく前に、
「て形」の肯定文の主な意味・用法を
復習しましょう。
復習の要らない方は飛ばしてくださいね。
「て形」肯定の意味・用法(復習)
●て形の基本的役割は
「単文と単文をつなぎ、複分を作る」
ということです。(~て、~)
●て形の意味・用法は
前後の文脈によって決まります。
つまり、
前後の文脈をみて、
「て形」の意味・用法を分類するのです。
●「て形」肯定の主な意味・用法は
・以下の4つです。
(1)付帯状況
(2)継起
(3)原因・理由
(4)並列
上記4つの用法の例文を示します。
「て形」の肯定、4つの意味・用法の例文
(1)マリさんは傘を持って、出かけました。(付帯状況)
(2)マリさんは事務室に行って、コピーをしてもらいました。(継起)
(3)マリさんは風邪をひいて、学校を休みました。(原因・理由)
(4)日曜日、キムさんは映画を見に行って、
・・・・ロンさんはショッピングに行きました。(並列)
ここまでは
「て形」肯定文の主な意味・用法を確認しました。
次に
「て形」の否定形について見ていきましょう。
て形の否定形の用法
①「~なくて」②「~ないで」➂「~ずに」
動詞「て形」の否定形は以下の三つです。
「~なくて」「~ないで」「~ずに」
●動詞は「~なくて」「~ないで」「~ずに」
・すべての形を使います。
●イ形容詞、ナ形容詞、名詞は
・「~なくて」の形で使います。
・「~ないで」「~ずに」の形を用いることはありません。
~ないで | ~なくて | ~ずに | |
動 詞 | 〇 | 〇 | 〇 |
イ 形 | × | 〇 | × |
ナ 形 | × | 〇 | × |
名 詞 | × | 〇 | × |
図にすると一目瞭然です。
●「~ずに」は書き言葉で多く使われます。
・間違いやすいのは「~なくて」と「~ないで」になります。
動詞:「~なくて」と「~ないで」
①「~なくて」
「て形」肯定形の主な用法は以下の4つでした。
(1)付帯状況
(2)継起
(3)原因・理由
(4)並列
動詞否定形の「~なくて」の形は
「原因・理由」、「並列」の意味機能を持ちます。
※実際には「原因・理由」の用法が
・多く使われます。
「~なくて」の「原因・理由」の意味
●「(前件)~なくて、~(後件)」
・前件の出来事が起こらないことで、
・後件の出来事が起こった、あるいは
・後件の状態になった
例
●日本に来たばかりのころは
・日本語がわからなくて、苦労しました。
●友達がいなくて、いつも一人で行動していました。
●お金が足りなくて、アルバイトを始めました。
●子供が全く宿題をしなくて、いらいらした。
●漢字が読めなくて、何が書いてあるのかがわからない。
「~なくて」の「並列」の意味
●いつも積極的な
キムさんが発言しなくて、おとなしいミリさんが発言した。
動詞:「~なくて」と「~ないで」
②「~ないで」
動詞否定形の「~ないで」の形は
・「付帯状況」や
「継起」「代替」「手段」「並列」
・の意味機能を持ちます。
「~ないで」の意味と例文
「(A)~ないで、~(B)」
●「付帯状況」:Aではない状態で、Bをする
(例)窓を閉めないで、寝てしまった。
(例)この歌なら、歌詞を見ないで、歌える
(例)砂糖もミルクも入れないで、コーヒーを飲む
●「継起」:Aをしないで、そのあとBをする
(例)朝ごはんを食べないで、学校へ行った。
(例)ジムさんは遅刻したのに、
・・・何も言わないで、席に着いた。
(注)否定形に継起があるのか、といった説もあります。
ここでは、「ある」としたらということで、
この例文を載せています。
●「代替」:Aをする代わりに、Bをする
(例)太郎は塾に行かないで、遊びに行ってしまった。
(例)これからは
・・・あまりお金を使わないで、楽しく遊びたい。
●「手段」
(例)今は包丁を使わないで、料理ができる。
(例)今日は時間があるから、
・・・バスに乗らないで、歩いていこう。
●「並列」
(例)なんと、
あのトムさんが失敗しないで、ジムさんが失敗してしまった。
※「並列」は、「~ないで」「~なくて」両方の形で使えます。
(例)今回の進級試験は
トムさんが合格しなくて、ジムさんが合格した。
動詞「~ないで」「~なくて」のまとめ
●動詞「~ないで」は多くの意味・機能を持つ。
「付帯状況」「継起」「代替」「手段」「並列」
●動詞「~なくて」は「原因・理由」を表す。
(まれに「並列」も)
学習者のよくする間違い
金:先生、僕は日本に来たばかりのころ、
日本語がわからないで、困りました。
→学習者にこう言われたとき、すぐに間違いを指摘し、
・・・簡潔に説明できるでしょうか?
上記の解説を読んでくださったなら、
もう大丈夫ですね。
では、
「~ないで」と「~なくて」の違いは
何だったでしょうか?
・・・
・・・
・・・
⇒「~ないで」は多くの意味機能を持つ
「付帯状況」「継起」「代替」「手段」「並列」
⇒「~なくて」は「原因・理由」の時に使う
「金:先生、僕は日本に来たばかりのころ、
日本語がわからないで、困りました」
金さんは、
日本語がわからないことが原因で、
困ったのです。
ですから
「日本語がわからないで」から
「日本語がわからなくて、困りました」
と訂正できます。
学習者には
●「~なくて」は「原因・理由」の時に使います。
●「~ないで」は「いろいろ・・・」
・・・・・・・と言っておきましょう。
最後に補足として
●イ形容詞のて形、 ~(動詞)
の形を取り上げます。
イ形容詞のて形+動詞
(子供のころホラー映画を家で見たとき)
●怖くて、夜トイレに行けなくなりました。
●今日は頭が痛くて、学校へ行けません。
●テストの点が悪くて、母に叱られました。
●今日は仕事量が多くて、定時に帰れそうもない。
●料理がまずくて、半分残してしまった。
●この荷物は重くて、持てない。
●暑くて、よく眠れない。
例文をざっと挙げてみました。
どうでしょうか。
「イ形容詞のて形 + 動詞」の構文は
基本的に「因果関係」を表します。
意味としては
形容詞で表される状態や属性があるために、
動詞で表せる出来事が発生する、
ということです。
この構文がよく使われるのは
明らかにマイナスの意味を持つ形容詞です。
後件の動詞についても、
自分の意志ではコントロールできない動詞、
あるいは不可能を表す動詞がよく使われます。
日本語教師としては
知っておくと役立つ情報ではないかと思います。
ではではニゴでした。