「お疲れ様」と「ご苦労様」その2

前回のまとめ

前回は
「お疲れ様」と「ご苦労様」の使い分けについて考えました。

ビジネス界での使い分け指導

ビジネスの世界では
多く以下のように指導されています。

ご苦労様です(でした)

 ⇒目上の人から目下の人に使う言葉。
  目上の人が目下の人をねぎらうときに使う。

お疲れ様です(でした)

 ⇒相手の立場にかかわらず、使える言葉。
  一般的なビジネスマナーとしては
  目下の人から目上の人に使っても差し支えない。

使い分けの実態

文化庁は2005年度に
「お疲れ様」と「ご苦労様」を
一般の人がどう使っているのか、
について調査をしました。

以下がその結果です。

●質問
会社で仕事を一緒にした人に対して
仕事が終わった時に
どのような言葉をかけますか?


自分より目上の人には
 「お疲れ様です(でした)」を
 69.2%の人が使っています。

 自分より目下の人にも
 「お疲れ様です(でした)」を
 53.4%の人が使っています。

 

「ご苦労様」は目上の人には使えず、
「お疲れ様」は目上、目下に関係なく使えるため、
多くの人が
「お疲れ様」を使用している
という実態がわかりました。

 

今では こんなによく使われている
「お疲れ様」ですが、
「お疲れ様」という言葉自体は
共通語ではなく、
方言から全国に広まりました。

 

以下をクリックすると
前回の記事がご覧になれます。
 ↓↓↓
「お疲れ様」と「ご苦労様」その1

 

「お疲れ様」は方言でしたが、
「ご苦労様」の語源は
どうだったのでしょうか。

「ご苦労様」の語源

「ご苦労様」が
以前どのように使われていたのかを
三省堂国語辞典編集委員の
飯間浩明氏が調べています。


飯間氏は江戸時代の
浄瑠璃や歌舞伎の中から
「ご苦労」という言葉を探しました。

すると、驚くことに
現代とは全く逆の結果となりました。
(現代:「ご苦労」は目上から目下へ使う)

 

つまり
「ご苦労」は
現代とは反対に目下から目上へ、
家臣から主君に対して使われていたのです。

「ご苦労」が
目上から目下へ
主君から家臣に対して使われた例は
江戸時代にはなかったそうです。
(ただし、
その使われた例文を見ると
家臣は面と向かっては
主君に対して「ご苦労」
とは言っていないそうです)

なぜ「お疲れ様」と「ご苦労様」が
対立する言葉となったのか?

お疲れ様 ⇒ 方言だった

ご苦労様 ⇒ 目下から目上の人に
       間接的に使っていた

 

過去には
対立して用いられてはいなかった
「お疲れ様」と「ご苦労様」


両者が現代では どうして
「目上に使うのか」
「目下に使うのか」という
対立する言葉となったのか、

その原因は
よくわかっていないようです。

テレビ業界から広まったという
俗説もありますが・・・

では
前回の学生から教師へのメールについての
問題に移ります。

学生から教師へのメール

学生からメールが届きました。
「先生、今日の授業、お疲れさまでした。・・・・・」

 

このメールを読んで
みなさんはどんな感想を持ちますか?
(1)から(3)の中で
当てはまるものがあるでしょうか。

(1)これでOK。
(2)違和感がある。
(3)失礼に感じる。

といった内容でした。

ビジネスマナーとしては
目上の人には「お疲れ様」を使うようにと
指導されます。

 

学生から見て教師は立場が上
だから、
「お疲れ様」は使ってもいいのではないか?
この学生の文面はOKなのではないか?

こう思われる方もいると思います。


しかし、
日本語教育としては
これは適切ではないと指導します。

適切ではない理由は二つ考えられます。
第一に
「お疲れ様」の意味自体を誤解している。
第二に
 これがとても大切です。
 敬語の本質を誤解している。

この二点があげられます。
では、
第一の「お疲れ様」の意味から見ていきましょう。

第一の理由:「お疲れ様」の意味

「お疲れ様」の意味の本質とは?

「お疲れ様」は
一緒に作業や仕事をした仲間同士が
お互いに
「よく頑張ったね」といったように
ねぎらいあうときに使います。


そこで
学生が教師に対して
「お疲れ様でした」を使うと
学生も授業準備の段階から
教師と一緒に同じ立場で
参加していたことになります。


毎日の通常授業では
教師が学生の手を借りる
ということはないので、
学生が「お疲れ様」を使うことは、
「お疲れ様」の意味自体を誤解している。
これが、このメールの
「違和感」の第一の原因です。


授業後のメールの場合
「先生、今日の授業、お疲れさまでした
ではなく
「先生、今日の授業、ありがとうございました。」

のように、
感謝の気持ちをあらわす表現にすると
いいですね。

第二の理由:敬語の本質とは?

「お疲れ様」と「ご苦労様」の使い分けの難しさ

現在「お疲れ様」と「ご苦労様」は
相手をねぎらう言葉として、使われています。

「お疲れ様」⇒ 目上にも使える(もちろん目下にも)
「ご苦労様」⇒ 目上の人が目下の人をねぎらうときに使う

しかし
日本語教育では
そもそも
目下の人が目上の人をねぎらうこと自体に
問題あり’と教えています。

 

日本語では
目下の人が目上の人を
評価」したり、「ねぎらっ」たり
ということは「してはいけない
と教えます。

 

例えば
教師が
「先生、今日の授業、よかったですよ。」
と、学生から評価されたら、
ほめられているとはいえ、
あまり気分のいいものではありません。


敬語表現を学ぶときには
目上の人に対して
評価したり、ねぎらったりしてはいけない
ということを
はっきりと伝えておいた方がいいですね。


学生が先生に
「先生の授業はいいですね」
「先生、きのうは私たちのために、頑張りました」
と、言いたい気持ちは
痛いほどよくわかります。

しかし、
そのように言われると
日本人としては
学生の優しい気持ちをわかってはいるものの、
やはり
上から目線だと感じてしまいます。

 

日本語では目上の人を
「評価したり、ねぎらったりしない」と
はっきり教える方が
学生は日本での社会生活を
よりスムーズに送れるに違いありません。

また、
「お疲れ様です(でした)」は
職場によっては
目上、目下に関係なく、
しかも
朝昼晩といった時間にも関係なく、
24時間
あいさつとして使っている

そういった職場も多いと思います。


その場合は
 *その職場に合わせる
 (アルバイト先に合わせる)
 *ただし、それは
  全ての職場に通じるあいさつではない、

ということを
学生には伝えておきましょう。

 

※「お疲れさまでした」と「ご苦労までした」のその1を
ご覧になりたい方は以下をクリックしてください。

→「お疲れ様」と「ご苦労様」その1

 

 

ではではニゴでした。

 

 

 

 

 

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