授受・学生の間違え⑤

授受表現・学生のよく間違える点

●「あげる/くれる/もらう」には 恩恵の含意があります。
そこで、恩恵の関与しない行為に使うと、
不自然な文になってしまいます。

例)×先生は 学生に 宿題を あげました。

宿題は、一般的に学生にとっては、
好ましくないものとして認識されています。
そこで、恩恵の含意のある「あげる」を使うと
非文になってしまいます。

例)○先生は 学生に 宿題を 出した。

上記の例のように「出す」を使います。

●「あげる/くれる/もらう」は、物が移動するときに使います。
しかし、恩恵の含意のない、物の受け渡しには使えません。

例①)×日本では 歩いている人に 無料で
ティッシュペーパーを あげている人がいる。
例②)×私は 店長に 今日の仕事の 日程表を さしあげました。

上記は、学生の作文からの抜粋です。
例①)は、「無料で」を言いたかったので、
恩恵の含意のある「あげる」を使ってしまいました。

日本人にとっては、無料でもらえても、
恩恵を感じない状況があります。

これは、文化の違いも、
誤用につながるといった例です。

例①)○日本では 歩いている人に 無料で
ティッシュペーパーを 配っている人がいる。
例②)○私は 店長に 今日の仕事の 日程表を 渡しました。

上記のように、
物の移動だけを表す動詞
「配る」「渡す」を使うと、自然な文になります。

●「あげる/くれる/もらう」は、日常会話でよく使います。
話し言葉的だと言えます。
そこで、以下のように、書き言葉や抽象的な言葉とは、
相容れません。

○「お年玉を あげた」
×「援助を あげた」

○「友人が、ヒントをくれた」
×「示唆を くれた」

○「プレゼントを もらった」
×「賄賂を もらった」

「与える」「受ける」「受け取る」といった動詞を
使った方がいいですね。

●恩恵を表す言葉は、ほかの国にもあります。
補助動詞を使って、出来事の恩恵を表す言語は
少ないとは言われています。

でも、韓国語、タイ語、ネパール語、カザフ語、シンハリ語
などには、あるそうです。

これは授受表現に限らないことですが、
その表現体系が同じ言語は、一つもありません。

すると、同じような表現があるために、
かえって、母語の干渉も起こりやすくなります。
そのため、習得は難しいと言わざるを得ません。

やはり、どの表現も、ひとつひとつ、丁寧に
導入していかなければなりませんね。

ではでは ニゴでした。

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