猫はどうして魚が好きなのか?

教師になりたての頃、
「好きです」という語彙を勉強するために、

「猫は魚が好きです。」
「犬は肉が好きです。」
「馬はニンジンが好きです。」・・・

などの例文とイラストを用意しました。

ところが、ここで議論が巻き起こります。

A:「犬は肉が好きだけど、猫も肉が好きだと思う。」
B:「えっ、猫が好きなのはねずみでしょう。」
C:「違うよ、僕の国では猫はトウモロコシが好きだよ。」

仁子:「と、とうもろこし!!!」

授業は白熱し、楽しかったけれど、
いったい何の授業なのか・・・

授業としては全くダメだった苦い思い出があります。
(失敗した授業は実によく覚えているものです)


そして、最近、
この授業が、どうしてうまくいかなかったのか、
その原因がわかりました。

な、なんと魚が好きなのは 
日本の猫だけだったのです。

 

猫はどうして魚が好きなのか?

 

NHK(テレビ局)には「チコちゃんに叱られる」という
人気番組があります。

その中で、
「猫はどうして魚が好きなのか?」というテーマがあったのです。

その答えは
「日本人が魚好きだから」というものでした。

どうして、その回答に至ったのか、
ご紹介しますね。

猫の分類

現在ペットとして飼われている猫は、
動物学上の分類では
食肉目ネコ亜目ネコ科ネコ属イエネコと分類されるそうです。
(獣医師会のホームページより)

これからもわかる通り、  
そもそも猫は
ライオンなどと同じ肉食動物
ということがわかります。

以下は
「日本動物科学研究所」所長であり、
静岡県伊東市にある
「猫の博物館」館長でもある
今泉忠明氏のお話です。

猫の食性

猫はネズミなどの小動物を好んで食べます。
もともとネズミや鳥などのを食べる動物です。

ところが、
日本では猫は魚が好きだと思っている人が多い。
(私もそうでした。)

キャットフードも
魚入りのものが多く売られています。

 

魚が好きなのは日本の猫だけ?

猫が魚好きだと思っているのは日本だけで、
日本以外の国では
牛肉や鶏肉などの動物の肉
食べさせていることが多いのです。

では、なぜ日本では
「猫は魚好き」というイメージになったのでしょうか。

猫の祖先

私たちにとって            
なじみの深い家猫の祖先は
リビヤヤマネコと言われています。

 

西アジアからアフリカ北部に生息する
リビヤヤマネコを
人が飼うようになったのは
およそ一万年前だそうです。

人類の悩み

人が定住し、農耕を営むようになって、
頭を悩ませるようになったのはネズミです。

ネズミは
畑や食料貯蔵庫の穀物を食い荒らすので、
人々の大敵となっていたのです。

生きるために
どうにかしてネズミを駆除しなければなりません。

そこで、リビヤヤマネコを家畜化し、
飼うようになった、と言われています。          

円の中に「猫」がいます

食料を守るために
猫を飼うという習慣は
古代エジプトから
世界各地に伝わりました。

日本の猫事情

猫の伝来

日本には そもそも
ペットとしての猫はいなかった、と言われています。

今のような飼い猫は中国から伝わり、
すでに奈良時代には
飼われていたことが文献などから わかっています。

 

当時、猫は
一部の貴族など限られた人たちを中心に飼われていました。

平安時代(862年~931年)に   
宇多(うだ)天皇が書いた日記、
「寛平御記
(かんぴょうぎょき)」には
このような記載があります。

「よその猫たちの毛は
みんな浅い黒ばかりだけど、
私の猫だけは
墨のように美しい黒なのだ」

ここには猫ブログのように
宇多天皇の猫自慢がつづられています。

いつの時代でも、
自分の飼い猫が一番かわいいんですね。

庶民が猫をペットとして
飼うようになったのは、江戸時代です。

そのきっかけは
将軍徳川綱吉(1646年~1709年)が出した、
かの有名な「生類憐(しょうるい あわれみ)の令」です。

この法律は今で言いうと「動物愛護法」でしょうか。

江戸時代以前、猫はつないで飼っていたのですが、
この法律で、猫をつなぐことが禁止されました。

放し飼いとなった猫は
街を徘徊するようになり、爆発的に増えたのです。

そこで、
今までは高根の花だった猫が
庶民でも飼えるようになったわけです。

その当時の猫が何を食べていたのかと言うと、
人間が食べ残した魚がメインでした。

当時の日本には
肉を食べる習慣が、ほとんどありません。

食事の中心は米と魚です。

結果として、
猫のエサは人が食べ残した魚となったのです。

猫はエネルギー源としてたんぱく質が必要です。

当時、簡単に食べられるたんぱく質は
魚しかありませんでした。

これが、本来肉好きな猫
日本では魚好きというイメージが定着した理由です。

猫の味の好み

猫の味の好み、こだわりというのは
乳離れした後の約12週間の間に食べた物で決まります。

日本の猫が魚を好むのは
ほとんど生まれた時から魚を食べているからです。

牧畜の盛んなスイスでは
猫は優雅にチーズをほおばっています。

イタリアのシチリア島の猫は
トマトのパスタが大好物だそうです。

トウモロコシが好きなのは
メキシコの猫でしょう。
メキシコではトウモロコシが主食ですから。

いろいろな国から来た学生に
「○○さんの国の猫は
どんな食べ物が好きですか?」と、聞いたら、
その国の人々がよく食べている物がわかりますね。

人は思い込みの生き物です。
私はずっと「猫は魚好き」と、思っていました。
日本以外の猫も、です。

授業をしていると
自分の常識が実は常識ではない、ということが
けっこうありますよね。

日本語教師って、やっぱりおもしろい仕事です。

 

ではではニゴでした。

コメントを残す

CAPTCHA


サブコンテンツ

このページの先頭へ