留学生の労働時間

夏休み前に日本語学校で事務をしてくださっている方との話し合いがありました。
その中で、特に大切だと思ったことを、ここに記します。

留学生とアルバイト

たいていの外国人留学生は
日本語を勉強しながら、アルバイトをしています。

私たち日本語教師は日頃、授業のことで頭がいっぱいになりがちです。
今日は あえて、学生のアルバイトのことについて、少し考えてみます。

現代の日本は 人口減少のまっただ中。
若年層労働力の不足は深刻です。

都内のコンビニや飲食店は 留学生の力なしには
今や回って行かなくなっています。

学生は 学費や生活費を補てんするために、たくさん働きたい。

コンビニや飲食店側は いくらアルバイトの募集をかけても、
日本人の応募はなく、留学生を頼りにしています。

お互いが持ちつ持たれつの関係になっていますが、
法律は どうなっているのでしょうか。

留学生の労働は原則禁止

留学生は日本語を勉強する目的でビザをもらっています。
そこで、原則として働くことは法律で禁止されています。

日本に来てから「資格外労働許可」を取得し、初めて
アルバイトをすることができます。

この許可証がなければ、留学生は働けません。

また、「資格外労働許可証」を持っていても、
一週間の労働時間の上限は28時間と決められています。

(ただし、夏休みなど、休みの期間が長い場合は40時間働けるそうです。)

ここで、注意しておかなければならないのは、
「残業代を払いますから、働いてください。」と言われても、
留学生は働いてはいけないのです。

学生は日頃お世話になっている店長から頼まれたら、
手伝ってあげたくなるでしょう。
情にほだされて、つい引き受けてしまうといったことが起こりそうです。

あるいは、
断りにくいという環境下で働いている人もいるかもしれません。

しかし、それは法律違反なのだ、と知っていれば、
きっぱりと断ることができると思います。

彼らのことを考えたなら、私たちは事務の方々にお願いして、
このあたりの知識をしっかりと留学生に伝えておく必要があります。

週28時間の上限を超えた場合のペナルティ

(1)留学生の受けるペナルティ

もし、留学生が週28時間以上働いてしまったら、どうなってしまうのでしょうか。

専門家によると
罰金や懲役などの対象とはならないものの、
強制退去(!!)、または、次のビザの更新が不許可になる、といった
ペナルティを受ける可能性があるそうです。

全く悪意のなかった場合でも、
店長を助けたいと思っての行為だったとしても、

最悪の場合この罰則が適用されてしまいます。

そうなると、日本語の勉強は続けることができなくなります。
専門学校や大学に合格していたとしても、合格を取り消されてしまうのです。

就職先が決まっていた学生でも、
その内定は やはり取り消されてしまいます。

これまで、頑張ってきた努力が水泡に帰します・・・・・・

こうなってからでは取り返しがききません。
私たちは学生に上記のことを十分に、しっかりと、伝えておくべきでしょう。

かれらのアルバイト先の責任者にも伝えておきたいですね。

(2)雇用者側のペナルティ

雇用者側にも週に28時間を超えて働かせた場合、
当然その責任を問われます。

具体的には
3年以下の懲役、または、300万円以下の罰金のいずれか、
あるいは両方ともが課される場合もあるそうです。

この責任を負うのは
会社だけでなく、店長や人事責任者といった個人も
刑事罰の対象となります。

「本社からの指示でした・・・・・・」
「会社全体の方針でしたから・・・・・・」
「だから、会社の命令に従っただけです・・・・・・」
といった弁明は通用しないとのことです。

直接の人事権を持っている責任者は
その責を負うことが当然だと考えられるからでしょう。

もし、こうした処罰があることを
アルバイト先の責任者がきちんと把握していれば、
留学生とアルバイト先との間でのトラブルも
少しは減るのではないでしょうか。

留学生への注意点

学生は一社だけはでなく、複数の会社で働いている場合があります。
この一週間の労働時間の上限は28時間という制約は
一社につき28時間ではない、ということを
彼らにしっかりと伝えましょう。

二つのアルバイトをしていたら、二社での労働時間の総数が、
28時間だということです。

勘違いしてしまう学生もいるかもしれません。
単なる勘違いで、
夢を棒に振ってしまったら、こんなに残念なことはありません。

様々な希望を胸に抱き、せっかく日本に来たのです。
法律上のルールを会社側も、留学生も、お互いによく理解し、
守っていきたいものです。

私たち日本語教師も、こうした知識を持って、
彼らのために、何とか役に立ちたいですね。

せっかくの留学が望まない結果となってしまったら、
泣いても泣ききれません。

 

私は つい、勉強の方ばかりに目が向いてしまいます。
こうした、留学生を取りまく様々な事態も、
知っておくべきなのだと、反省しきりです。

事務の方々には とても感謝しています。ありがとうございます。

*これは2018年8月の時点での情報です。

 

ではではニゴでした。

 

補足

上記の記事に関して、
日本語教師のT・Nさんから、こんなコメントをいただきました。
T・Nさんから、許可をいただきましたので、以下に記したいと思います。

留学生の資格外労働時間

さて、留学生の資格外労働ですが、長期休みの場合、
1日8時間まで働いてもいいそうです。(入管に確認しました)

ということは1日8時間×7=56時間は最大はたらけるということです。
(これも入管に確認しました)

ただ、これは入管法に基づく見解とのことで、
労働基準法では、1日8時間労働で休みを2日取ることが望ましいとのことでした。
(労基に確認しました。)

労基の担当者が言うには、
「留学生の場合、入管法を第一に、これに準ずる」とのことでした。

それに対し私が
「では週に最大56時間は可能ということでしょうか」と尋ねると、
「それは…、グレーですね。」と濁した回答でした。

入管担当者も労基も、実際よくわかっていないという印象でした。

T・Nさんからのアドバイス

入管の職員の対応は、電話するたびにコロコロ変わります。

必要書類について尋ねるにしても、電話するたび、指摘されるたびに
「必要だ」「そうでない」

という風に統一されていない感を受けます。

たぶん彼らも把握しきっていないのでしょうね。
言質を取られたくないから、曖昧な言い方をすることが多いです。
全員ではないですが。

だから、
入管とのやり取りは出来る限り担当者名と言質を取れるようにすべきだと思います。

以上、T・Nさんからのアドバイスでした。
T・Nさん、ありがとうございます。

 

ではではニゴでした。

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