「~ている形」(7)経歴(経験)

「~ている形」は 経歴(経験)を表す用法もあります。
これは、主に中級で学びます。

(1)山本さんは大学時代、アメリカに留学している

<雑誌に掲載されている家の写真を見ながら>
(2)この家は5年前の地震で壊れている

「~ている形」経歴(経験)の特徴は
①発話内容は過去のこと、すでに終わっていること。
②すでに終わった①の出来事を、振り返って、今と結びつけている。

の二点があげられます。

具体的に見ていきましょう。

(3)田中さんは①以前、IT関係の会社で働いていたので、
パソコンに強い

(3)の文を具体的に述べると、

以前、IT関係の会社で働いていた(ので)
(← 過去にしていたこと。すでに終わっていることです。)

パソコンに強い。(← ①の文を振り返り、今と結びつけています。)

といった解説になるでしょうか。

(1)山本さんは大学時代、アメリカに留学している

(1)の文は
①発話内容はすでに過去のことですが、
この文の中には
②すでに終わった出来事を、振り返って、今と結びつけている、
という文脈はありません。

しかしながら、この(1)の文が述べられている状況を想像してみると、
(1)山本さんは大学時代、アメリカに留学している
(⇒だから、英語がうまいに違いない。この文の翻訳を頼んでみよう。)
などといった、場面が考えられます。

つまり、(1)の文を今と結びつけている文脈が想像できます。

<雑誌に掲載されている家の写真を見ながら>
(2)この家は5年前の地震で壊れている

(2)の文も
①発話内容はすでに過去のことですが、
②すでに終わった出来事を、振り返って、今と結びつけている、
という文脈はありません。

しかし、(2)の文が述べられている状況を想像してみると、
(2)この家は5年前の地震で壊れている
(⇒だから、これから建てる家は、
もっと耐震性の優れた家にしなければならない。)
といった、話し合いの場面が想像できます。

つまり、(2)の文をもとに、今の話し合がもたれている状況です。

「~ている形」・経歴(経験)の用法に制約はあるのか?

「~ている形」表現には、大きく分けると三つの用法がありました。

(1)進行中 (2)結果の状態(維持) (3)結果の状態(残存)

(1)進行中を詳しくご覧になりたい方は、以下をクリックしてください。
https://www.tomojuku.com/blog/teiru2and3/

(2)結果の状態(維持)をご覧になりたい方は、以下をクリックしてください。
https://www.tomojuku.com/blog/teiru4/

(3)結果の状態(残存)をご覧になりたい方は、以下をクリックしてください。
https://www.tomojuku.com/blog/teiru5-2/

*結果の状態(属性・様子・形状)をご覧になりたい方は、以下をご覧ください。
https://www.tomojuku.com/blog/teiru6/

(1)進行中
まりさんは 今、掃除をしています
(2)結果の状態(維持)
まりさんは ソファーで横になっています
(3)結果の状態(残存)
どうしたんでしょう、あの家。窓にひびが入っていますよ。

このページで見ている(6)経歴(経験)は、上記の

(1)進行中 (2)結果の状態(維持) (3)結果の状態(残存)

のすべてを、(6)経歴(経験)の用法に変換することができます。
ちょっとわかりにくいので、具体的に例を挙げていきます。

(1)岡田さんは、今、時代劇を書いています。(進行中

⇒岡田さんは、3年前に 時代劇を書いている
今度は、恋愛ものに挑戦するそうだ。(経験経歴

(2)由美さんは看護師をしています。(結果の状態・維持

⇒由美さんは 以前 看護師をしている。(経歴・経験
子供の手が離れた今、また、復帰したいそうだ。

(3)窓にひびが入っています。(結果の状態・残存

⇒このタイプの窓は
8年前の大型台風が来た時に、ひびが入っています
ですから、今回のリフォームでは、
こちらのタイプの窓をお勧めします。(経験

(6)経歴(経験)
過去の出来事を今に結びつける、という用法ですから、
どんな「~ている形」でも使える、
というのは、当然のことかもしれません。

「~ている形」経歴(経験)と「た形」の比較

(1)又吉直樹さんは 2015年に「火花」という小説を書き、
そのデビュー作が第153回芥川賞を受賞した

(2)又吉直樹さんは 2015年に「火花」という小説を書き、
そのデビュー作が第153回芥川賞を受賞している

(1)はたんに又吉さんが2015年に芥川賞をとったという
事実を述べているにすぎません。しかし、

(2)のように~ている形経歴・経験を使うと、
①又吉直樹さんは2015年に芥川賞を受賞している
(← 過去にしていたこと。すでに終わっていること。)

そして、文面には書いてありませんが、
(②その(芥川賞をとったという)経歴は、今でも有効である)
ということを表しています。

もうひとつ例を挙げます。

(1)この橋は 10年前の台風により 流された

(2)この橋は 10年前の台風により 流されている

上記の会話がなされている状況を想像すると、流される以前の、
この橋の写真を見ていると思われます。そして、
(1)では「橋が10年前に流された」という事実のみを語っています。
(2)では「橋が10年前に流されている
そこで、この教訓(経歴)を今につなげ
これから建てる場合には、橋梁を高くする、より堅固な橋にする、
といった改善策を講じたほうがいい、というような話し合いがもたれていると、
想像できます。

経歴・経験の「~ている形」は、上記のように
書かれていない文の意味を補てんしながら読む、ということがあります。

そこで、中級になってからでないと、なかなか勉強できないですね。

ではではニゴでした。

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